住宅内のWi-Fiのスループット性能評価
目的
- 住宅内のWi-Fiルーター(802.11ac)のスループットをシミュレーションにより計算し、Wi-Fiの性能を評価する。
使用する解析ソフト
- 3次元電波伝搬シミュレータ Wireless InSite を用いて理論的なWi-Fi(802.11ac)のスループットを計算する。
- ネットワークシミュレータ QualNet は使用しない。
解析条件
- 解析モデルは2階建ての住宅である。 送信点(Wi-Fiルーター)は各階に1つずつ配置し、 受信点は各階のフロアをカバーするようにグリッド上に配置する。


- 解析条件は以下のとおりである。
解析条件 | |
---|---|
Wi-Fi規格 | 802.11ac |
周波数 | 5GHz |
帯域 | 80MHz |
送信電力 | 7dBm |
アンテナ、偏波 | ダイポール、垂直偏波 |
受信点とリンクを確立する送信点 | 最大受信レベルをとる送信点 |
ノイズ電力密度 | -174dBm/Hz |
データストリーム数 | 1 |
伝搬経路計算の制限(最大回数) | 反射=3、回折=1、透過=3 |
解析の結果
スループット
- スループットの計算結果を下記に示す。




(赤色は1階の送信点、緑色は2階の送信点)
チャネル容量
- 2つの送信点の住宅内のチャネル容量を下記に示す。
- チャネル容量とは、Shannon-Hartleyの定理に基づき帯域とSINR(Signal to Interference plus Noise Ratio)から求められる、理想的な最大スループットである。

- チャネル容量を計算すると1500Mbpsであり、80MHz帯域幅の802.11acにおけるデータ転送速度390Mbps(256QAM、5/6 coding rate)より大きい。
スループットカットオフ
- スループットカットオフを200Mbpsに設定し、200Mbpsのスループットを満たす受信点の割合を下記に示す。
- 2つの送信点の合計ではスループット200Mbps以上の受信点の割合は83.45%である。
1階の送信点 | 2階の送信点 | 送信点合計 |
---|---|---|
50.72% | 65.79% | 83.45% |
- 802.11acのWi-Fiシステムでは、ルーターと端末間で複数のストリームを確立することで、より高いデータ転送速度を実現できる。
- データストリーム数を2に設定した場合、200Mbpsのスループットを満たす受信点の割合を下記に示す。
- 2データストリームでは、スループットレート200Mbps以上の受信点の割合は83.45%から93.20%に増加した。
1階の送信点 | 2階の送信点 | 送信点合計 |
---|---|---|
69.19% | 81.04% | 93.20% |
まとめ
- 住宅内のWi-Fiルーター(802.11ac)のスループットをシミュレーションにより計算し、Wi-Fiの性能を評価した。
- 802.11ac以外に802.11n、LTE、WiMAXの性能も評価できる。
- 本稿はRemcom社のWebサイト( WiFi Performance Simulation in a House with Two Routers )をもとに作成した。
-
電波伝搬シミュレーションには、3次元電波伝搬シミュレータ
Wireless InSite
を用いた。