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導入事例・インタビュー

共同研究および衛星測位分析ツール「GPS-Studio」活用事例

●プロフィール
東京海洋大学大学院 海洋工学系 海事システム工学部門
久保 信明 准教授


設立:1875年
所在地:東京都江東区越中島2-1-6(越中島キャンパス)
東京海洋大学 ホームページ: https://www.kaiyodai.ac.jp/
情報通信工学研究室 ホームページ:http://www.denshi.e.kaiyodai.ac.jp/jp/

電波伝搬解析ツール「RapLab」との出会い

弊社の電波伝搬解析ツール「RapLab」を導入いただいたのは、2006年でしたね。

2005年前後に、東京大学が、電波を光に見立ててその経路を探る「レイトレース法」を使い、東京の銀座で人工衛星の可視化シミュレーションを行っていました。

私は率直に面白い試みだと感じ、自分でもGNSSに関するシミュレーションに挑戦してみよう、と思い立ちました。ただ、レイトレース法のプログラムを研究室で作るところからやるのは、 非常な労力と時間を要します。何か使えるツールはないものか、と探していた時、KKEのRapLabの存在を知りました。RapLabも、「レイトレース法」を用いた電波伝搬の解析ツールで、試してみたら、かなり"できる"ことがわかりました。RapLab をGNSSに応用したのは、私が初めてだったようでした。

必ずしも実測を必要としない「シミュレーション」でのGNSS研究の可能性

改めてGNSSの仕組み、課題を教えてください。

人工衛星を利用して、地球上のモノや人の位置を割り出すのがGNSSです。通常、4基以上の衛星から発せられる電波信号を受信機がキャッチして、かかった時間からそれぞれとの距離を計算し、「自分(受信機)が今どこにいるのか」を算出します。

ただ、場合によっては測位誤差が生じてしまいます。地上に到達する前の、電離層や対流層で起こる電波の遅延も原因になりますが、受信機の周辺環境によって引き起こされる 障害もあります。特に問題となるのが、高い建物が林立するような都市部で、電波が建物にぶつかって反射や回折を起こすと、衛星との疑似距離(衛星と受信機の時計の誤差などを含んだ距離)の正確な 算出が困難になるのです。いわゆるマルチパスの問題ですね。

そうなると、GNSSを利用した製品に不具合が起こる可能性があるわけですね。

そうです。だから、例えば銀座なら銀座の、この地点の信号強度はこうだ、というデータが重要となります。天空にある衛星の数や見える角度は、日や時間によって毎日毎分毎秒変わりますから、時間軸のデータも必要になります。
それを知るためには、実測するのが、ある意味一番手っ取り早いです。カーナビ等のITS分野で利用したいのならば、実際にA地点からB地点まで走行して、データを収集すればいいのです。

では、なぜ「シミュレーション」なのでしょうか?そのメリットとは?

今の例でいえば、各地点で衛星からの電波がどの程度受信できて、GNSSのパフォーマンスがどのくらい期待できるのか、といったことが、"走らなくても"わかるのです。例えば、海外で車を生産しようとしたら、カーナビは、その地域の「衛星環境」に合わせて設計する必要があります。その環境を、日本にいながら再現することもできるわけです。また、シミュレーションによって「その日、その時間の測位精度が低い」というような状況が把握できたとしたら、そのタイミングに合わせて実測データを収集し、対応を検討するといったことも可能になるはずです。
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未来の位置測位がわかる ~衛星状況に応じたシミュレーション~

いろんな条件を設定することができるのも、シミュレーションならでは、ですね。

例えば、衛星を好きなように"追加"して、どうなるかを見ることもできます。
今後、新たな衛星が打ち上げられるたびに、電波の環境はどのように変化するのか、5~10年後に、こうした世界の新たなシステムが本格運用を始めたら、地上での利便性は、具体的にどれだけ高まるのか。そうした 未来予測もGPS-Studioがあればできるわけです。3D地図を持ってきて、「その場所やルートで実際にどうなるのか」のシミュレーションを行うのが肝で、 そうすると"説得力"も全く違います。GPSを利用した製品開発などには、極めて有用なデータになるのではないでしょうか。

一方、シミュレーションに関しては、実測値との誤差が問題になることはありませんか?

シミュレーションの結果をできるだけ"実測"に近づけることは私のひとつのテーマですが、正確さを突き詰めていけばいいというほど、 単純なものではないということも理解しています。

例えば、車などの移動体をシミュレーションしようとする時、その移動による受信環境を完璧にトレースするのは困難ですし、そこまで必要ないと私は考えています。シミュレーションの精度に関していえば、要は、それが実用に供するレベルを確保できているか、ユーザーニーズに応えられるのか、で評価されればいいのではないでしょうか。GNSSに関しては、そういうことが世界的に見ても行われていないのが問題だ、と私は感じています。

GNSS分野において「誰でも簡単にシミュレーションできる未来」へ

GPS-Studio開発に至った経緯を教えてください。

元々の構想は、2012年頃からATR(株式会社国際電気通信基盤技術研究所)に出向なさっていた、KKEの古川 玲さんと一緒に、関連研究を行っていた時からありました。私にはGNSSに関する 長いキャリアがあります。シミュレーション自体も好きで、マルチパスに関するシミュレーションを行い、ほぼ実測値に近づけることにも成功していました。そうした"素養"があったことは、決して「GNSS専用」ではない RapLabをすんなりと使いこなせた背景にあったのではないかと考えています。逆にいえば、そうでない人には、使うのが難しいのが現実です。古川さんとは、「みんなが簡単にシミュレーションできるようなツールが欲しいね」 という話をずっとしていました。

そのためには、都市、地形データの取り込みから、細密なモデル作成、衛星測位誤差の要素の把握、解析といった ファクターをパッケージ化した、衛星測位分析ツールが開発できればと考えていました。しっかりしたものができれば、GNSSの知識がほとんどない人でも、結果が導き出せるはずですし、そうしたものにしていかなければ ならないのではと常々考えています。

衛星測位分析ツール「GPS-Studio」ができることにより、どんなメリットが期待できますか?

文中イメージ画像2.jpg 「この街のこの場所では、何個の衛星が見える」というところまでシミュレーションで導き出したうえで、製品開発に結びつけるといった動きには残念ながらなっていません。 GPS-Studioのような衛星測位分析ツールは、実はまだ日本に存在しない貴重なツールだと思います。
シミュレーションがあまり行われないのは、"敷居が高く"て、やろうとする人が少ないのも要因なのではないでしょうか。誰もが簡単に使えるものができたら、開発の現場も劇的に変わるのではないかと感じています。 そのことを期待して、私自身、KKEとともに研究開発に取り組んでいきたいと考えています。

他大学との連携も視野に

今後のGPS-Studioの課題、目標を教えてください。

この研究は自分たちで"囲い込む"のではなく、KKEはもちろんのこと、できるだけ他大学などとも連携してやっていきたいと考えています。そのうえで、次世代を担う学生たちに、技術をしっかりと伝授していく必要があると感じています。

当社に対するご要望があれば、お聞かせください。

GPS-Studioに関しては、「そうしたものがあるなら、ぜひ使ってみたい」という潜在ニーズは、企業などにはかなりあるはずなのです。「シミュレーションでなければできないことがある」というその意義を、広く社会にアピールしていってもらいたいと思います。
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